【夫婦カウンセラーが伝えたい】思春期・青年期の子どもがいる家族のかたち〜家族の発達課題について⑤〜

こんにちは!

 

『夫婦立て直し工場』の石谷落果です。

 

プロフィール

石谷落果

夫婦カウンセラー

『離婚寸前の夫婦危機を経験したこと』が夫婦カウンセラーを志すきっかけ。家族心理学・認知行動療法に精通し、心理的なサポートから経済的フォローまで多角的な夫婦カウンセリングを実施中。

夫婦問題は長引くほど立て直しは難しくなります。ひとりで悩まずに、一緒にしあわせな家族を目指しませんか?

 

今回は、思春期・青年期の子どもとの向き合い方について考えます。

 

親・自分・子の3世代が新しいステージへと移行する期間。

 

人生の転換期と言っても過言ではありません。

 

一緒にじっくり学んでいきませんか?

 

石谷落果

夫婦・家族関係についてひとりで考えるのがつらいと感じたら、夫婦立て直しカウンセリングを選択肢のひとつとして考えていただけたらと思います
 
必ずあなたの力になります

 

夫婦立て直しを始めたばかりの方↓

 

状況別の夫婦立て直し↓

 

家族の経済的不安を無くしたい方↓

 

家族の発達課題について学びたい方↓

 

目次

思春期・青年期の子どもがいる家族のかたち

本記事は子どもを心身健康に育てるために児童期に焦点をあてた記事に続き、

思春期・青年期の子どもがいる家族のかたちについてお伝えします。

 

この時期は親離れと子離れの過渡期。

 

親も子どもにとっての準備期間なのです。

 

自立へのプロセスは平坦ではありません。

 

一緒に確認していきましょう!

 

身体の揺れと心の揺れ

思春期・青年期が何歳ごろにあたるのかはいくつかの考え方があります。

 

今回は、子どもが中学生・高校生・大学生の時期である約10年間を想定しています。

 

では、親としての自分はおよそ何歳くらいでしょうか?

 

子どもを産んだ時期や何番目のきょうだいかで個人差はありますよね。

 

おおよその目安として30代半ば〜50代の中年世代とします。

 

祖父母まで視点を伸ばすと、さらに20〜30歳程度年上の60〜70代が中心。

 

では、思春期・青年期の子どもを持つ家族に現れる心の揺れ・身体の揺れについて考えてみます。

 

親の心の揺れ、身体の揺れ

私たちが30代半ば〜50代に差し掛かる年齢になると心と身体にどのような変化が起こるでしょうか?

 

共通して実感するのは、身体機能・外観の衰えです。

 

肉体のピークは過ぎて、若い頃のような運動や食事が取れなくなってきます。

 

仕事や趣味も寝る間も惜しんで没頭するような無理が効かなくなってきます。

こんなはずじゃなかったのに。

 

随分と歳を取ったなあ。

 

と自分自身の変化をネガティブに捉えるようになります。

 

さらに、自分たちの親の介護問題もちらつき始めます。

 

『いつまでも元気でいてくれる』という楽観的な考えから現実問題へとシフトする時期でもあります。

 

子どもの心の揺れ、身体の揺れ

親と対称的に、子どもの方は肉体的なピークを迎えます。

 

身体機能はもちろんのこと、新しい文化に対する思考力や柔軟性は親を凌ぐでしょう。

 

親と子どもの人間としての能力の差がだんだんと縮まってくる期間です。

 

そして、子どもは将来の心理的・経済的な自立に向けてアイデンティティを確立し始めます。

 

まだまだ、判断力は未熟であるため親のサポートが必要な場面はありますが、

子どものためにも本人の生き方を認めていく姿勢が必要です。

 

家族システムの移行期

家族システムを開いていくことの重要性と明瞭な境界を持つことの大切さは、

児童期の発達課題でもお伝えしました。

 

思春期・青年期ではより柔軟な家族境界を持つことが家族の発達課題のひとつです。

 

子どもが中学・高校・大学と進学するにつれて子どもたちはますます多くの時間を家族以外の人間関係の中で過ごします。

 

学校の友人。

習い事の人間関係。

インターネット。

SNS。

 

現代では、コミュニティも社会の場も多岐にわたっています。

 

子どもには子どものスケジュールが作られ始めます。

 

夕飯に間に合わなくなる。

食事を外でとるようになる。

家族での外出にも参加できない。

友達との約束を優先させる。

 

といった様子も認められるようになります。

 

そこで、私たち親は家族(境界)のルールを柔軟に自由度の高い姿へと変えていかなければなりません。

 

夕食を食べないときは事前に知らせる。

家族行事に参加するかは都度話し合う。

 

というように、少しずつ家族のシステムを開いていきましょう。

 

世代間の文化の変化

また、子どもは家族の中に若者文化を引き込んできます。

 

私たち世代は思春期にインターネットやスマートフォンのように、自分たち親(源家族)が思春期の頃にはなかったものを家族の中に持ち込みました。

 

子どもも新たな文化を家族の中に持ち込んできます。

 

価値観や文化の変化が加速する現代では、20〜30年の世代差はあまりにも大きな変化。

 

子どもの生きている世界は私たちの知っている思春期・青年期とは違うということを積極的に受け入れたいですね。

 

子どもの友人関係

子どもの友人関係にも変化が表れます。

 

児童期には、『ギャング・エイジ』と呼ばれる同性同年の仲間集団を形成し、親や教師に対して対抗したり、仲間集団の帰属意識を高めます。

 

思春期になると、ギャング・エイジを卒業し、『チャムシップ』という友情関係を作ります。

 

チャムシップ(親友関係)

チャムシップ(親友関係)とは、物の見方や考え方、志向性が似た少人数の友人関係のこと。

 

1番の理解者であり、同じ気持ちであること。

 

そして裏切らない味方でいることが求められるようになります。

 

親友との関係には、思春期以前の心の歪みや精神病理に働きかけ癒す力が備わっていると言われています。

 

親のと愛着形成がうまくいかずに安全基地が形成されなくても、

親友関係の中で安全基地が形成されると家族に代わる強力なサポートとなります。

 

一方で、弊害もあります。

 

裏切り問題が浮上したり、親友の特殊な家族事情や問題に同情する。

 

そして、自分は家族に不満が無くても一緒に家出をしたり、自殺を図ったりするなど、

常識では考えづらい行動へと駆り立てる可能性があるのです。

 

ピア(異質を認めた対等な人間関係)

青年期になると対等性が重んじられるピアと呼ばれる関係が築かれます。

 

チャムシップのような同質性のつながりであるのに対して、自分と相手の違いを認めておもしろいと思う人間関係をつくります。

 

異質性によるつながりです。

 

共に過ごす時間の長さを問わずに相手を理解し、互いの行動を束縛せず、相手に敬意を払っています。

 

友人関係の最も成熟した段階ともいわれます。

 

価値観や環境の異なるさまざまな人との間に相互尊重的な関係を築く対人関係能力を身につけていきます。

 

この相互尊重的な関係を築く能力が将来結婚する配偶者との親密な関係を築くための基盤になります。

 

相談相手は親よりも友人?

悩み事の相談相手も中学生から高校生にかけて、母親から友達へと移り変わっていきます。

 

学年ごとに思春期・青年期の子どもたちにとって重要な人間関係は親から友人へと推移する傾向が見られます。

 

一方で、年齢ごとの相談相手に関しては、年々と母親の割合が増えている傾向にあります。

 

1982年から2012年までの30年間の推移では、悩み事の相談相手については母親が増加傾向です。

 

もちろん、相談相手の主流は友達です。

 

しかし、現代では相談相手として母親の存在が重要になってきているといえます。

 

『自立=親子の心理的な距離』という考え方は、子どもの心の拠り所を奪ってしまうかもしれません。

 

アイデンティティの確立

これまでお伝えしたように、

子どもの思春期・青年期は、家族全体にとっても変化が大きい時期です。

 

子どもは自立に向かう。

 

親は老いていく自分を受け入れる。

 

というように、アイデンティティの確立が望まれます。

 

青年たちのアイデンティティの達成

まずは、子どもたちのアイデンティティの確立についてです。

 

思春期に入ると、

子どもたちは『自分とは何者なのか』『自分らしさはどこにあるのか』という疑問を抱きます。

 

そして、自分なりの答えを見つけようとするのです。

 

自分らしさは、

時間経過による変化、

さまざまな接する相手、

自分の置かれている状況など社会の中で確立されていきます。

 

具体的には、アイデンティティ(自我同一性)の確立には↓のようなことが大切。

  • 自分に対して誠実な意見や気持ちを発することができる。
  • 意見や気持ちが自分と相手をバランスよく尊重できる。

 

しかしながら、

アイデンティティを達成できたのかを 『できた』

『できない』

という二分法で捉えるのはあまりに単純です。

 

そこで、発達心理学者のジェームズ・マーシャは自我同一性を4種類に分けることを提案しました。

 

親は、子どものアイデンティティの確立(同一性達成)に向けて、

明瞭な境界を保ちながら、

少しずつ自立に向けて家族を開いていくことが大切です。

 

アイデンティティの4分類

アイデンティティの確立については、↓のように4分類されます。

アイデンティティの分類
  • 同一性達成
  • モラトリアム
  • 早期完了
  • 同一性拡散

 

それぞれは、『危機』と『傾倒』を経験したかによって分類されます。

 

『危機』『傾倒』と表現すると何だか分かりづらいですよね。

 

要するに、

『危機』とは、人生の目標や目的がはっきりする経験をしたか。

 

『傾倒』とは、人生の目標や目的のためにアクションを起こしている、または人の役に立っていると感じる経験をしているか。

 

ということを表しています。

同一性達成

同一性達成とは、

人生の目標や目的がはっきりと定まっていて、目標や目的に対して努力や取り組みができている状態です。

 

4分類のうちで最も心理的に安定している状態と言えます。

 

モラトリアム

モラトリアムとは、

同一性達成とは逆に、人生の目標や目的が定まっていない状態。

 

目標や目的が定まっていないため、達成するための努力や取り組みもしていないということ

 

つまり、まだこれから自分が何者なのかと向き合っていく段階です。

 

早期完了

人生の目的や目標が幼少期に親に与えられた内容を受け入れて、それに対してアクションを起こしている状態。

 

例えば、『家業を継ぐ』『一流大学に入る』など物心ついた時に親から与えられた目標や目的へ邁進しています。

 

つまり、努力はしているけど自分とは向き合っていない状態を指します。

 

同一性拡散

同一性拡散は、

『危機』の有無は関係なく、『傾倒』していない状態のこと。

 

モラトリアムの状態のさらに手前の同一性地位と言えます。

 

人生の目標はあるけどそれに対して努力を始めていない。

 

目標もないので、どのようにアクションを起こしていいのかわからない。

 

というような心理状態です。

 

思春期・青年期のみだけでなく、一度アイデンティティを確立した後も、心理的に不安定になると同一性拡散の状態になってしまいます。

 

親たちの思秋期

次に私たち自身の発達課題について考えます。

 

私たちは、物心がついて以来成長と発達を続けていました。

 

ところが、中年期になると減速や一時停止を余儀なくされます。

 

人生がこのまま永遠には続かない。

 

限りがあることを思い知らされる。

 

というような経験をしていきます。

 

誰にとってもストレスの多い、人生の転換期なのです。

 

そこで、中年期のアイデンティティをもう一度確立させる必要があります。

 

アイデンティティの再体制化

中年期にアイデンティティを再体制化するには、

↓のように4つの段階で気づきや修正を行います。

中年期のアイデンティティ再体制化プロセス
  1. 身体感覚の変化の認識に伴う危機期
  2. 自分の再吟味と再方向づけへの模索期
  3. 軌道修正・軌道転換期
  4. アイデンティティ再確定期

 

参考書籍の言葉でそのまま引用しているので分かりづらいですよね。

 

プロセス順にシンプルにしてお伝えしていきます。

 

一緒に確認していきましょう!

 

身体感覚の変化の認識に伴う危機期

まずは、↓のような身体感覚の変化を認識します。

  • 体力の衰え
  • 活動量の低下
  • 体調の変化への気づき

 

心身が若い頃のように動かせなくなったなあ。

 

いつまでも若くないなあ。

 

と心身の変化から気づき始めます。

 

仕事については両極端です。

 

一線を退いて仕事が落ち着いて少し物足りないと感じている方や逆に中間管理職としてストレスを抱えている方もいるかもしれません。

 

世代交代の寂しさや人生の停滞感を覚える時期でもあります。

 

これからの人生の方向性を考えるようになります。

 

 

自分の再吟味と再方向づけの模索期

これまでの自分の人生を振り返るフェーズです。

 

将来どのようになりたいのか。

 

若い頃の何にでもなれた状態からは一歩引いて、自分の未来について考えます。

 

おそらく思秋期になると、

『自分自身が第一線で活躍する』

というよりも、

『若い世代を支える・継承する』

という思いが生まれてくる方が多いかと思います。

 

配偶者との関わりや子育てをしていく中で、

少しずつ自分を中心とする生き方から、

親しい他者や自分より幼い者・弱い物を配慮する生き方へと、

シフトチェンジする傾向にあります。

 

軌道修正・軌道転換期

そして、

自分自身のやれることを見つけたら、

将来に向けての生活や価値観を見直していきます。

 

時間・社会的役割・人間関係の喪失などと向き合いながら、

 

これからの人生を前向きに主体的に選び直していきます。

 

また、家族との関係性も変化するでしょう。

 

自分が家族を引っ張ってきたという護る者としての立場が少しずつ護られる立場へと移行していきます。

 

アイデンティティの再確定期

最後の段階です。

 

これから先の人生を軌道修正することで、

自己安定感や肯定感が大きくなります。

 

中年期のアイデンティティの再確定は、

 

次にお伝えする『自殺』という思秋期の大きな問題を解決する一つの糸口になるかと思います。

 

自殺を防ぐ

思秋期の大きな課題のひとつに『自殺』という課題があります。

 

1998年以降、自殺者数は減少傾向にあります。

 

しかし、男女差に着目すると男性は女性の約2.2倍となっています。

 

とくに、年代別で見ると『40代』、『50代』、『60代』が約35%を占めています。

 

思秋期の男性はいずれの性別や年齢と比較しても自殺を選んでしまう傾向が高いのです。

 

そして、最も多い自殺理由は、

 

『健康問題』

 

次点で、

『経済・生活問題』

 

となります。

 

自分の心身の衰えや病を受け入れることができない。

 

つまり、老化する自分への不安が人を自殺へと突き動かしている可能性もあるのです。

 

また、仕事に関しても左遷や解雇を迫られる方も多いのが現実。

 

とくに、夫婦関係の問題を仕事へ打ち込むことで回避してきた場合、

たったひとつの拠り所が奪われてアイデンティティを喪失し、

生きる意味を見失うリスクがあります。

 

一方、女性の場合、

子離れによって親としての役割が終わることへの無気力感。

老親の介護。

というように母親としてのアイデンティティを失う喪失感と親を介護する先の見えない不安に悩まされる傾向にあります。

 

男女ともに、思秋期の自殺を防ぐには、社会的な役割とは別のアイデンティティや心の拠り所が必要ということになります。

 

もちろん、人生には結婚しない選択肢もあります。

 

ですが、良好な夫婦関係には思秋期の課題を乗り越える力があると私は思います。

 

参考書籍

本記事を作成するにあたって参考にした『家族心理学』に関する書籍です。夫婦関係の問題や葛藤が実は夫婦間だけの出来事が原因ではないことがわかる一冊になっています。

 

最後に

人生の主役は自分自身ですが、

少しずつ年齢を重ねるにつれて、役割も変わってきます。

 

変化を受け入れながら、生きるのはとても難しいことです。

 

熟年離婚のすべてが悪いとは思いません。

 

夫婦それぞれの価値観があります。

 

子育てが落ち着いて『別れを選ぶ』という道を選んでも夫婦で話し合った結果ならひとつの正しい選択です。

 

それでも、夫婦がともに生きて、年老いていくことができるなら私はしあわせなことだと思います。

 

石谷落果

夫婦・家族関係についてひとりで考えるのがつらいと感じたら、夫婦立て直しカウンセリングを選択肢のひとつとして考えていただけたらと思います
 
必ずあなたの力になります

 

これからも一緒に、しあわせな家族を目指しましょうね!

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