配偶者のことが許せなくて毎日イライラしているの!
不満や不安の原因は自分や配偶者が持っている物の見方・考え方のせいかもしれません。
こんにちは!
『夫婦立て直し工場』の石谷落果です。
プロフィール
石谷落果
夫婦カウンセラー
『離婚寸前の夫婦危機を経験したこと』が夫婦カウンセラーを志すきっかけ。家族心理学・認知行動療法に精通し、心理的なサポートから経済的フォローまで多角的な夫婦カウンセリングを実施中。
夫婦問題は長引くほど立て直しは難しくなります。ひとりで悩まずに、一緒にしあわせな家族を目指しませんか?
皆さんは長い夫婦関係の中で、配偶者のここが許せないと感じる点はありませんか?もしかすると、物の見方や考え方が凝り固まって非合理的思い込み縛られているからかもしれません。非合理的思い込みは、じわじわと夫婦関係に影響を与えます。
しかし、解消できれば夫婦関係を見直す良いチャンス。一緒に見直してみませんか?
- 配偶者を許せないのは物の見方・考え方が違うからです。
- 【~しなければならない】【~に決まっている】という凝り固まった物の見方・考え方が非合理的思い込みを作ります。
- 非合理的思い込みはアサーティブなコミュニケーションの邪魔をします
- 日常的な物の見方・考え方をチェックしましょう。
- 夫婦間の非合理的思い込みについて知り、向き合い方も知っておきましょう。
夫婦・家族関係についてひとりで考えるのがつらいと感じたら、夫婦立て直しカウンセリングを選択肢のひとつとして考えていただけたらと思います。
必ずあなたの力になります。
夫婦立て直しを始めたばかりの方↓
状況別の夫婦立て直し↓
家族の経済的不安を無くしたい方↓
家族の発達課題について学びたい方↓
配偶者を許せないのは物の見方・考え方が違うから。
配偶者の許せないポイントについて皆さんはいくつぐらい思い浮かべますか?
- 全然愛情表現してくれない
- 感謝の言葉が少ない
- 家事に抜け漏れが多い
- 思い通りに動いてくれない
- 人を傷つける言い方をする
- 不安がってリスクを取る行動ができない
↑のような許せない言動があるかと思います。
一方で箇条書きで並べた配偶者の許せない部分のうち、『これは気にならないなあ』と感じる部分もあるのではないでしょうか。その理由のひとつが、自分が持っている『物の見方・考え方』からの影響です。
実は、夫婦間だけでなく様々なコミュニケーションの中ではその人が持つ『物の見方・考え方』が自分の感情や配偶者へ向かう言動に大きく影響を及ぼしているのです。せっかく人生を共にしているパートナーですから、できれば配偶者のことを認めて受け入れていきたいですよね。
同じような出来事なのに、人によって結果が違ってしまうことをわかりやすく示しているのが、アメリカの心理療法家アルバート・エリスの論理療法の基本となる『ABC理論』です。
Ellis, A. & Harper, R. A. (1975) A new guide to rational living. New Jersey : Pretice Hall
ABC理論って何?
j夫婦間の言動についてABC理論で説明した図が↓になります。
ABC理論が一番伝えたいことは、
人の感情や行動は外部の出来事に直接的に引き起こされるのではなく、その出来事に対する個人の解釈や信念によって影響を受ける
ということです。きっかけとなった出来事、状況や配偶者の言動等が同じでも、その人が持つ物の見方・考え方次第で結果は変わってくるのです。
例えば、配偶者の洗濯物の干し方がおかしいと感じたとします。干し方がおかしいと思ったときに、『こういうこともあるよね』とそっと直しておく人もいれば、『なんでちゃんとやらないの!?』と配偶者へ感情的に指摘する人もいます。
『洗濯物の干し方がおかしい』という事象を【A(Activating event)=きっかけとなったできごと】とすると、『そっと直す』または『配偶者へ感情的に指摘する』という行動は【C(Consequence)=配偶者に対する言動】に当てはまります。
そして、配偶者に対する言動の分かれ道となるのが【B(Belief)物の見方・考え方】です。
- 失敗することもあるよね。
- 別に洗濯物の干し方が少しくらいおかしくても困らないよ。
- やってくれることに感謝しよう
という物の見方ができれば感情的に指摘することなく、配偶者を認めて受け入れることができますよね。
一方で、↓のような物の見方・考え方を持っていたとしたらどうでしょうか?
- 家事はちゃんとやって当たり前よ
- 私の服ばかり適当に干しているのだろう
- 面倒くさいから手を抜いているに違いない
というネガティブな物の見方・考え方をしていたらストレスとなって配偶者へ攻撃的な態度を取るのもうなずけますよね。
このように、【B(Belief)物の見方・考え方】には、誰にでも失敗はあるし、失敗すること自体に大きな問題はないという現実に基づく論理的な思い込みと家事は完璧にやらなければならない、手を抜いているに決まっているという現実に基づかない非論理的思い込みがあることがわかります。
後者の非論理的な思い込みのことを『非合理的思い込み』と言います。非合理的思い込みには日常生活の中で共通するものと夫婦関係に大きく影響を与えるものが存在します。これから配偶者を受け入れて夫婦関係をより良くしていくために『非合理的思い込み』について詳しく見ていきましょう。
~しなければならない。~に決まっている。という物の見方・考え方は危険!?
『非合理的思い込み』を持つ方は、配偶者のことを許せないと感じることが多い傾向にあるということはお伝えしました。許せないという感情は、夫婦間で感情的なぶつかり合いが増えて夫婦関係を悪化させやすくなります。
とくに、夫婦間で起こった出来事を『~しなければならない』、『~に決まっている』という非合理的思い込みというフィルターを通して受け止めてしまうと、配偶者に対する言動も非合理なものとなります。
当然、非合理な言動を受けた配偶者は不満や敵対心を感じたり、恐怖や悲しみを感じたりします。 すると、ますますきっかけとなる言動や出来事が増えたり、悪化したりすることで夫婦間の溝が大きくなっていきます。価値観は夫婦でもぞれぞれだという根本的なことを忘れてしまうと非常に危険だと言えますね。
夫婦に関する非合理的思い込みは成育環境で作られる
では、なぜ私たちは『非合理的思い込み』というフィルターを通して配偶者をみてしまうのでしょうか?実は、『非合理的思い込み』は幼いころからの他者との関わりの中で体験したり、言われたり、萬田りしたことから作り出されます。長年の生活の中で積み重ねられ、繰り返され、社会生活によって強化されていきます。
とくに、夫婦に関する思い込みは親の影響を強く受けます。
- 両親かいつも助け合っていた。
- 両親がお互いに感謝の言葉を伝えていた。
- 個人を尊重し合っていた。
- 常に家族を優先する選択をしていた。
というようなポジティブな影響から、
- 父親が亭主関白だった。
- 母親は自分を押し殺して我慢するものだった。
- 父親の居場所が家になかった。
- 母親と子どもが父親の悪口を言っていた。
- 嫁姑の仲が悪かった。
- 両親がいつも喧嘩していた。
- 不倫していた、それを見過ごしていた。
というようなネガティブな影響まで様々です。
『夫とはこういうものだ、こうあるべきだ』
『妻とはこういうものだ、こうあるべきだ』
『夫婦とはこういうものだ、こうあるべきだ』
幼い頃から染み付いた物の見方・考え方によって夫婦関係はじわじわと歪んでしまいます。
Aさん(30代・女性) 幼いころから夫婦喧嘩を目の当たりにしてきて、夫婦間のコミュニケーションは感情をぶつけ合うものだと思い込んでいました。そのため、結婚生活が始まってからは家事や育児のことで意見が食い違うと強い口調で応戦。すると、配偶者は愛着スタイルが回避傾向にあったためコミュニケーションが一方的になってしまいます。夫婦とはこうあるべきだという非合理的思い込みが招いた例のひとつです。その後、カウンセリングを受けていく中でアサーションの大切さに気づくことで、夫婦間では常に感情的である必要はないと合理的な考えに変わり、対等なコミュニケーションを取り戻しています。
日頃の物の見方・考え方をチェックしよう
さて、非合理的思い込みの厄介な点は自分ではよくわからないという点です。幼いころからの成育環境で構築されるので自分の無意識部分に根付いていて客観視が難しいのです。夫婦立て直しカウンセリングを受けていく中で個別に対応することも可能ですが、まずは日常の考え方について非合理な物の見方・考え方になっていないかをチェックしてみましょう。
平木典子 アサーション・トレーニングさわやかな〈自己表現〉のために 金子書房 2009
ちなみに↑の書籍はアサーション入門書にはかなりおすすめ。アサーションは夫婦立ての直しの基礎となる知識と技術。夫婦立て直し工場を訪れてこの本を知ってもらえたらだけで私としてはひと安心です。
↓の項目について日頃の考えとどのくらい一致しているのかを回答してみてください。
- 自分のすることは誰にも認められなくてはならない
- 人は常に有能であり、適性があり、業績を上げなければならない
- 人の行いを改めさせるには、かなりの時間とエネルギーを費やさなければならない
- 人を傷つけるのは非常に悪い事だ
- 危険や害がありそうなときは、深刻に心配するものだ
- 人は誰からも好かれなくてはならない
- どんな仕事でも、やるからには十分に、完全にやらなくてはならない
- 人が失敗したり、愚かなことをしたとき、頭にくるのは当然だ
- 人が間違いや悪いことをしたら、非難すべきだ
- 危険が起こりそうなとき、心配すれば、それを避けたり、被害を軽くしたりできる
どの程度一致しているかは5段階の数字で表してくださいね。
- 全然一致していない 0
- あまり一致していない 1
- どちらともいえない 2
- かなり一致している 3
- まったく一致している 4
引用:平木典子 アサーション・トレーニングさわやかな〈自己表現〉のために 金子書房 2009
では、皆さんの非合理的思い込みがどうなっているかを考えてみましょう。先ほどのチェックリストにおいて、回答が0~1だった項目に関しては合理的な考え方ができています。一方で、回答が3~4の項目は非合理的思い込みにとらわれてしまっていると考えられるのです。
様々な考えがあって良いと思える人はアサーティブであると言えるのですね。配偶者を許せないのか、それとも受け入れることができるのかは合理的に考えられる領域の広さが関係しているとようです。
物の見方・考え方チェックリストの結果から具体的にわかること
物の見方・考え方チェックリストの結果からわかることを少し具体的に説明したいと思います。
まず、問題項目は大きく5つの非合理的思い込みの領域に分けられます。
- 人は誰からも愛され、常に受け入れられるようであらねばならない
- 人は完全を期すべきで、失敗してはならない
- 思い通りに事が進まないのは致命的なことだ
- 人を傷つけるのはよくない。だから人を傷つけるような人は責められるべきである
- 危険で、恐怖を起こさせるようなものに向かうと、不安になり、何もできなくなる
それぞれ心当たりのある方もいるのではないでしょうか。順番に説明していきますね。
人は誰からも愛され、常に受け入れられるようであらねばならない
人は誰からも愛され、常に受け入れられるようであらねばならないという非合理的思い込みは、1,6と一致している傾向にあります。
『1.自分のすることは誰にも認められなくてはならない』
『6.人は誰からも好かれなくてはならない』
人は誰からも愛され、常に受け入れられるようであらねばならないという思い込みは、もともと人間の『愛情欲求』『受容欲求』から発しています。自分のことを愛してほしい、受け入れて欲しいという強い感情が~でなければならないという強い思い込みを生んでいます。
愛着障害の一種とも考えられ、幼少期に身近な人から無条件の愛情を受けられなかった場合に、愛されることに飢えてしまい、自分の周囲の人すべてに愛されるように振舞ってしまうのです。
全員の好かれるということはとても非現実的なこと。
人にはそれぞれ異なる価値観がありますから、反りが合わない人もいれば、特定の一部分だけが一切交わらないような人もいます。それでも他者から愛されようと努力すると、自分を偽ったり、人によって振る舞いを変えることになってしまうでしょう。
夫婦関係に落とし込むとどのようなことが考えられるでしょうか。配偶者に対しても『愛されなければならない』『受け入れられなければならない』という思い込みが危険なのは同じです。自分の気持ちや考えよりも配偶者の意向を優先して自己主張ができなくなることがあります。
本当の自分を出せないというのはとてもストレスが大きいです。『自分はこんなに頑張って合わせているのに!』と配偶者が自分を受け入れてくれないことを許せなくなる要因にもなります。
配偶者に愛される自分とそうじゃない自分が存在してもいいのです。
『誰が何というと、自分はこれなんだ。これ以上でも以下でもない』という自己受容をがキーになります。夫婦関係についてはトータルでプラスならOKという認識を持てるようになると良いでしょう。
人は完全を期すべきで、失敗してはならない
人は完全を期すべきで、失敗してはならないという非合理な思い込みはチェックリスト2,6のという物の見方・考え方を持っている傾向にあります。
2『人は常に有能であり、適性があり、業績を上げなければならない』
6『どんな仕事でも、やるからには十分に、完全にやらなくてはならない』
この非合理的思い込みは『完璧主義』の一種で、失敗を恐怖している感覚が強いため発生します。日常的に不注意や見逃しが起こらないように注意深くなるために、常に気を張っているような状態で陥りがちです。
コミュニケーションでは、『間違ったことを言ってはいけない』と思い込んでいて自分が完璧な回答ができないと感じたら沈黙してしまいます。(私自信はこの傾向があると感じています)
そのため、愛着スタイルが回避傾向がある人のように、ディスカッションを回避してしまいます。ディスカッションを回避するということは夫婦間で話し合わなければらないことを放置してしまうので、深いコミュニケーションを取れません。そして、完璧主義傾向は配偶者にも悪影響を及ぼします。
具体的には、配偶者のミスや間違いに過敏に反応してしまうことが挙げられるでしょう。
- 食器に洗い残しがある。
- 洗濯物がひっくり返っている。干し方が違う
- 子どもへの接し方が自分と異なる
- 掃除の詰めが甘い
配偶者にとっては気にならないことが自分は気になってしまうでしょう。日常的にストレスが溜まりますし、配偶者に指摘して言い争いになることも。仕事についても、成果を上げなければ自分には意味がないという価値観を持っている傾向にあります。
そのため、残業続きになったり、仕事を家庭に持ち込んでしまったりして、プライベートとのバランスが崩れがちです。
人間は完璧でいることはできません。
青い芝生を見たときに、
『奇麗だね』と言えるのか『あそこに一本雑草が生えている』と言ってしまうのかで人生の幸福度は大きく変わってくるでしょう。
大事な部分はちゃんとにこなしておきたいですが、失敗しても大けがをしたり、トラブルにつながらないのなら受け入れてしまうように心がけてくださいね。
思い通りに事が進まないのは致命的なことだ
思い通りに事が進まないのは致命的なことだという非合理な思い込みは3,8のような物の見方・考え方が影響を与えます。
3『人の行いを改めさせるには、かなりの時間とエネルギーを費やさなければならない』
8『人が失敗したり、愚かなことをしたとき、頭にくるのは当然だ』
要するに他人が自分の思い通りに動かないことで『欲求不満』を感じやすいタイプです。人間関係のトラブルの多くは、相手が自分の思うようにいかないことで発生します。
- 自分の意見を受け入れてくれない。
- お願いしたことをやってくれない。
- 自分の指示通りに相手が動かない。
- 失敗して自分に迷惑がかかる。
という理想とのギャップが欲求不満を引き起こします。
相手を思い通りにしたい人はすぐに相手を責め、相手を変えようとします。親子喧嘩、夫婦喧嘩を見ていると、相手を思い通りに動かしたい気持ちから出ているやり取りがほとんどです。そこで、『思い通りに事が進まないのは致命的なことだ』という非合理的思い込みに支配されている方には↓の言葉を心に留めておいて欲しいのです。
You cannot change othersor the past.
You can change yourselfand the future.
要約:他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。
引用:カナダの精神科医エリック・バーン(Eric Berne)
過ぎ去った自分の過去は変えられませんが、今からの人生を変えることはいつでもできます。そして、他人が変わるのはその人自身が変わろうと思った時だけ。自分にできるのは相手に変わって欲しいと提案することです。
皆さんの提案によって変わるかどうかは相手が自分で決めて自分自身で変わるのです。あなたが与えたのは変化のための種で、あなたが相手を変えたことにはならないのです。思い通りにならないときは自分ができることを探りましょう。自分が変われば、相手も変わってくれるかもしれません。
人を傷つけるのはよくない。だから人を傷つけるような人は責められるべきである
人を傷つけるのはよくない。だから人を傷つけるような人は責められるべきであるという非合理な思い込みは4,9の物の見方・考え方に影響を受けいています。
4『人を傷つけるのは非常に悪い事だ』
9『人が間違いや悪いことをしたら、非難すべきだ』
この思い込み持つことで対人関係において自己矛盾を抱えている状態になってしまいます。私はいつも人を傷つけないようにしている。だから、人を傷つけるようなことをする人を許せない。
どうでしょうか。
配慮に満ちている半面で、配慮しない人への攻撃心が潜んでいますね。人と人がコミュニケーションをしていると自分では気づかないうちに相手を傷つけてしまうことがあります。その人のことを完璧にわかっているわけではないので、どのような言動で傷つくのかははっきりとわからないからです。
ですが、非合理的思い込みに支配されていると、配慮しているはずの自分の言動で相手を傷つけてしまったとき、自分は配慮しているのだから『そんなつもりはなかった』と考えてしまう傾向にあります。すると、やっとの思いで傷ついたことを話してくれた相手をさらに傷つけることになります。
もっとひどい場合には、『傷ついた』という言葉で自分が傷つくので『そんなことをいう相手はひどい』と相手を責めることもあるでしょう。
危険で、恐怖を起こさせるようなものに向かうと、不安になり、何もできなくなる
危険で、恐怖を起こさせるようなものに向かうと、不安になり、何もできなくなるという感覚を持っている方は、チェックリスト5,10の物の見方・考え方から影響を受けています。
5『危険や害がありそうなときは、深刻に心配するものだ』
10『危険が起こりそうなとき、心配すれば、それを避けたり、被害を軽くしたりできる』
この状態を一言で表すなら『神経症的傾向が強い』でしょうか。リスクや不安を感じやすいために身動きが取れなくなったり、できるだけ安全な行動を取ったりします。
根本的に人間は不安を感じやすい生き物です。文明の栄えていなかった頃は、常に他の生き物、天災、病など危険と常に隣り合わせでした。当時と遺伝子は変わりません。ちょっとしたことで不安や恐怖を感じやすいような脳の仕組みになっています。
ただし、人生は予期しない出来事の連続です。夫婦関係においても様々な問題やトラブルを抱えながら一緒に幸せな家族を目指して成長していくことが求められます。最悪の事態や可能性の低いトラブルに頭を抱えているなら↓の2つの言葉を思い出してください。
不安の9割は現実には起こらないということ。
不安が的中したとしても致命的な状況はほとんど起こらないということ。
日々、夫婦問題に悩まされているとネガティブな感情を反芻してしまいます。しかし、離婚したってしあわせな人生の選択肢はいくらでもあります。
離婚したら不幸になる
そもそも↑のような物の見方・考え方が非合理的思い込みなのです。
夫婦立て直しに取り組んでいる夫婦カウンセラーの私が離婚したって大丈夫というのは、矛盾を抱えているように思えますよね。でも、配偶者に否定されるかもしれない、子どもと会えなくなるかもしれないという不安や恐怖が夫婦関係のバランスを崩します。
不安や恐怖と共存しながら、心理的に自立した人になりたいですね。
夫婦間で起こりがちな具体的な非合理的思い込み
ここまでは、とくに抱えやすい非合理な思い込みを夫婦間に落とし込むとどのような問題が発生するのかをお伝えしてきました。次は、夫婦関係における【とくに注意しなければならない非合理的思い込み】について紹介していきますね。夫婦間の非合理な思い込みの記事を書くのにあたって参考にしたのは↓の書籍です。
野末武義 夫婦・カップルのためのアサーション 自分もパートナーも大切にする自己表現 金子書房 2015
夫婦のコミュニケーションがうまくいないのは9割以上アサーションができていないからです。私のカウンセリングよりもずっとずっと価値のある書籍です。
夫婦間系に纏わる非合理的思い込みは親や周囲の環境、人間関係によって無意識のうちに築かれていきます。具体的には、非合理的思い込みと一致している物の見方・考え方をしていた場合は、それが原因となって夫婦問題に発展するかもしれません。細心の注意が必要です。
- パートナーが本当に自分のことを愛してくれているのであれば、自分の気持ちや考えや欲求を言わなくても察してくれるはずだ。
- うまくいっている夫婦には問題や葛藤はない
- 夫婦の間では、言いたいことは何でも言ってよい。
- パートナーが傷つくかもしれないことは、言うべきではない。
- 夫(父親・男性)は○○であるべきだ。妻(母親・女性)は□□であるべきだ
- パートナーに不満を感じたとき、実家や子どもに頼るのは当然だ。
- 夫婦の考え方や価値観は一致しているべき。
『うっ、心当たりがあるぞ』と思った皆さんはチェックしてみてくださいね。
パートナーが本当に自分のことを愛してくれているのであれば、自分の気持ちや考えや欲求を言わなくても察してくれるはずだ。
「自分を愛してくれる配偶者なら言わなくてもわかってほしい」と察しと思いやりが根付いた日本ではなじみのある考え方ではないでしょうか。しかし、察してほしいという主張は日本だけでなく、欧米でも見られます。
なぜ、非合理なのかというと、普段から自分の気持ちや考えを察してほしいと考えている人の多くは非主張的なコミュニケーションをとってしまうからです。心の中では「こうしてほしい、ああしてほしい」という考えや欲求を持っているのですが、直接口に出すことは少ないのです。
そして、配偶者が期待通りの反応をしてくれなかった場合はひじょうにがっかりし、がっかりした気持ちも抑え込んでしまいます。すると『言わない→伝わらない→がっかり』の負のループを繰り返すことになります。がっかりするだけならまだ良いのですが、怒りを感じて感情的に配偶者へ表現してしまう場合は、真意が伝わらずに余計に悪影響となります。
対策
対策は、以下のような考え方にシフトすることです。
- どんなに愛し合った夫婦でも察することには限界がある。
- 配偶者が全ての自分の気持ちを察することができないように、自分も全ての配偶者の気持ちを察することはできない。
- 配偶者の察しに期待するよりも、適切な自己表現の方が大切である。
過剰な期待から自分と配偶者を解放してあげてください。そもそも配偶者と言っても、別の心を持つ人間。遺伝子も育ってきた環境も大きく異なるでしょう。だから、本来なら察しと思いやりで通じることは少ないです。
他人と『察しと思いやり』が成立するのは、他人に対して期待値が低いからというだけ。自己表現することは自分勝手で悪いことだと思うかもしれません。しかし、自己表現を自分勝手だと思う気持ちが非合理な思い込みです。アサーティブに相手を尊重し正しく伝えることができるのならむしろとても良いことなのです。
うまくいっている夫婦には問題や葛藤はない
皆さんは長年にわたって良好な関係を築いている夫婦は悩みなんてないのだと思っていませんか?いつも仲良くしているし、きっと喧嘩なんて無いんだろうと感じてしまう夫婦も周囲にいるのではないでしょうか。ところが、長期的に良好な関係を維持できている夫婦も問題や葛藤を抱えています。
うまくいかない夫婦との違いは、問題や葛藤を一緒に解決して乗り越えられているということ。
家族の発達課題はライフステージの変化ごとにどの夫婦にも共通の課題として表れます。例えば、子どもが産まれてから子中心の生活になって配偶者を蔑ろにしてしまうというのは、どの夫婦にも起こるトラブル。特別なことではないのです。対応の仕方が間違っているために、夫婦間の溝が深まります。すると、セックスレス、モラハラ、不倫などの問題が表面化します。
また、葛藤や問題が無く過ごせている場合、配偶者が我慢している可能性が高いです。配偶者とは異なる考えを自分がもっていたとしても、問題や葛藤を起こさないために、自分の中に押しとどめてしまいます。非主張的な自己表現がパターン化してしまうと、「自分さえがまんしていればいいんだ」という自己犠牲的な生き方につながるかもしれません。
一方、攻撃的な自己表現につながる人もいます。自分の考えをパートナーに押しつけて支配的に振る舞います。葛藤や問題を回避しようとするのです。
また、葛藤や問題を起こしてはいけないと非合理的思い込みをもっていると、夫婦の間に起こって当然の葛藤や問題を深刻に考えすぎてしまいます。ひどく落ち込んだり、あるいは強い怒りを感じることにもつながります。理想化された夫婦イメージに振り回されることなく、うまくいっている夫婦であっても、葛藤や問題が起こることはあるんだ。と開き直りましょう。
大切なのは葛藤や問題を早く共有・認識して解決のために話し合うことです。
夫婦の間では、言いたいことは何でも言ってよい
夫婦間の問題や葛藤は積極的に話し合っていくのが適切です。しかし、何でも言っていいというわけではないです。夫婦は最も近しい他人。自分の言いたいことは何でも言ってよいと思っているとしたら、立ち止まって自分の言動を振り返ってみることをおすすめします。
また、自分の言葉によってパートナーが傷つくこともあるのだと考慮していないという意味では、典型的な攻撃的な自己表現です。パートナーへの共感性が低いといえるでしょう。また、自分の正直な気持ちや考えや欲求を配偶者に伝えると、内容によっては傷ついたり、受け入れられない場合もあるでしょう。配偶者からの反論で自分自身も傷つく可能性もあります。
『だったら、何も言えないじゃん!』
適切な伝え方を知っていれば大丈夫ですよ。
「夫婦の間では、何でも言ってよい」と攻撃的な自己表現をしていいと思い込んでいると、パートナーは傷つき、徐々に無力感を抱いていきます。もしくは怒りをためていずれ爆発するでしょう。熟年離婚や仮面夫婦のリスクを負うことになります。
また、攻撃的な自己表現の行動の裏側には、強い不安や愛着障害が隠れているケースがあります。
- 配偶者よりも優位に立っていないと自信を失ってしまう。
- 自分と配偶者の境界がわからなくなってしまい必死にコントロールしようとしている。
- いつか配偶者が自分から離れていってしまうために執着してしまう。
などが具体的なケースです。不安という感情は生きていくうえで切っても切れない感情。しかしながらその不安が的中する確率はとても低いのです。私たちができるのは不安をできるだけありのままに受け入れて必要以上に過敏にならないこと。不安を和らげてうまく付き合っていくには、マインドフルネス瞑想が有効。
言いたいこと・伝えたいことは感情むき出しではなく、配偶者の気持ちを考慮したり、アサーティブな適切な自己表現で伝えるようにしていくことが大切なのですね。
パートナーが傷つくかもしれないことは、言うべきではない
【夫婦の間では、言いたいことは何でも言ってよい】というわけではありませんが、パートナーを傷つけないようにと配慮しすぎることも、アサーティブな言動を妨げます。自分の正直な気持ちや考えや欲求を伝えないということは、配偶者と正面から向き合って付き合うのを避けているのかもしれません。配偶者に避ける態度を見抜かれて不誠実だと受け取られる可能性もあります。
配偶者を傷つけないよう過度に配慮するくせがついてしまうと、次第に「言えないこと」や「言ってはいけないこと」が増えていきます。コミュニケーションそのものが希薄になって表面的な会話しかできなくなってしまうのですね。中年期以降の夫婦の幸福度は相互的な自己開示に影響を受けます。傷つけないために伝えないという選択は長期的には夫婦関係にネガティブですので注意が必要です。
パートナーを傷つけないように配慮することは重要ですが、配慮する気持ち以上に重要なのはいくら配慮しても傷つけてしまうことはあり得るという現実を受け止めること。そして、もし傷つけてしまったら、二人できちんと話し合うことでしょう。
人間同士だから傷つけてしまうのは避けようのないことです。夫婦としての絆は、楽しいことやうれしいことだけを共有していたのでは深まりません。傷ついたり、傷つけられたりという体験を繰り返しながら、お互いにわかり合うことを通して絆が深まっていくのだということを忘れてはならないでしょう。
夫(父親・男性)は○○であるべきだ。妻(母親・女性)は□□であるべきだ
よくありがちな夫婦間の非合理的思い込みのひとつにその人の役割をジェンダーやべき論で語るというものがあります。
- 男なんだから泣くな
- 父親は母親よりも稼がなくてはならない
- 女性はお淑やかでいなさい
- 女は家庭を守るのが当然
というような言葉を言われたことはありませんか?親や周囲の人から言われ続けることによってそういうものだと思い込まされてしまいます。もちろん、成育環境からの影響も受けながら性格は構築されていくので、自分自身は言われ続けた役割を全うしようとする気持ちがあります。
自分の中の男らしさ、女らしさを貫くのは個人の価値観なので自由です。ただし、配偶者にまで自分のイメージ通りの役割を全うさせようとすると問題が起こります。実際には、男女問わずさまざまなタイプの人がいます。固定化したイメージと配偶者を比較して不満を募らせるよりも、柔軟で多角的な視点からパートナーを見ることが大切だということですね。
この後紹介する『夫婦の考え方や価値観は一致しているべき』という非合理な思い込みにも通じますが、夫婦間での性格の不一致に悩んだら夫婦間で価値観リストを作成してみましょう。『こんなに夫婦で違うんだ』と気づくことが夫婦はこうあるべきという非合理的思い込みを解くためのカギになると思います。
パートナーに不満を感じたとき、実家や子どもに頼るのは当然だ
配偶者とうまくいかなくなると誰かに相談したいと思うタイミングはどの夫婦にも起こります。相談相手としては親や子どもが選ばれることもしばしばあります。しかし、親や子どもに頼る、相談するというのは、夫婦関係においてタブーです。
性格不一致、価値観の違いによって夫婦関係が崩れている場合、どちらかが100%悪いという状況はほとんどありません。しかし、親に相談することで血の繋がった我が子を大切に思う気持ちからどうしても自分に肩入れしてくれる場合が多いです。客観的に夫婦関係を見つめ直すことができなくなってしまうんですね。
時には、「離婚したほうがいい」「実家に戻ってきなさい」と離婚を勧めてくる親もいます。(私自身も離婚寸前のときは親に相談してしまい、離婚した方がいいと説得されそうになっていました。)ところが、親の言葉の裏側には、親自身が自分の夫婦関係に満足していなかったり、一人暮らしのさみしさを抱えていたりして、無意識のうちに子どもに頼りたいという気持ちが隠れていることもあるのです。
親がカウンセラーのように中立の立場で相談に乗らない限り、親に相談しても夫婦関係は前進することはまずないです。そして、相談した自分自身は、親に肯定されることで『自分に落ち度はない』と配偶者への敵意を強めてしまいます。
また、子どもに配偶者への愚痴を聴いてもらっているというケースもよく耳にします。配偶者との関係に問題があったり悩みを抱えていたりすると、子は支えようとカウンセラーのように話を聴いてくれます。ただし、子は親の感情に対してひじょうに敏感です。繰り返し聞かされることでどちらかに肩入れしてしまいより夫婦関係が悪化することも考えられます。
親や子どもが夫婦問題について中立な立場で話を聴くことはとても難しいのです。
さらに、弊害として、子どもがしあわせな夫婦の形をイメージすることが難しくなり、結婚生活で同じような問題を起こします。結婚に対するネガティブなイメージを築く成育環境を自ら作り出してしまっているのです。家系の課題が連鎖してしまう要因のひとつとなりますので、避けなければなりません。
ですので、夫婦問題で悩んで誰かに相談したくなったら夫婦に関する書籍を読んで学ぶことやカウンセリングの利用を検討してください。
手前味噌のようで恐縮ですが、専門的な知識を持つ第三者と話をすることは夫婦関係だけではなく、自分の人生を好転させるきっかけになりますよ。
※DV、アルコール・ギャンブル中毒、犯罪に関わっているなど、配偶者に明確な落ち度があって命の危険を感じる場合は話は別です。親や友人に助けを求めてとにかく早く逃げましょう。
夫婦の考え方や価値観は一致しているべきだ
価値観は結婚生活にとても大切な要素です。お互いに同じ価値観だったから結婚したという方も多いでしょう。結婚観、子どもの有無、金銭感覚、親との距離感など、一致していると意思決定もスムーズで、衝突も減ります。しかし、『一致するべき』と押し付けてしまうのは、夫婦関係が悪化する危険な兆候です。
どんなに身近な存在になっていたとしても配偶者は別の心を持つ人間。物の見方・考え方は異なっているのが普通なのです。離婚理由によくあげられる「性格の不一致」とは、実際には夫婦の言動の根底にある、お互いの物の見方・考え方や価値観の不一致のことを指しています。そして、お互いの物の見方・考え方や価値観が同じではなく、話し合ってもうまく調整できないと、「性格が合わない」と認識されていると考えられます。
性格の不一致が起こるのは、配偶者と価値観が違うことを受け入れられないからってことですね。
そして、性格の不一致で離婚してしまう人は再婚しても同じ失敗を繰り返してしまいます。
また、夫婦間の価値観が一致していることのデメリットも存在します。夫婦で意見が一致し過ぎてしまうことで、他の価値観に意識を向けなくなってしまうという点です。
育児では、夫婦の価値観の一致のデメリットがとくに顕著です。例えば、子どもには自由にのびのび成長してほしいという価値観で一致していると躾や学業が疎かになってしまいます。逆に、厳しく教育した方がいいと一致していることで、子どもが強くプレッシャーを感じてしまい、愛着形成や発達に影響を与えます。
そして、子ども親から一様な価値観を教え込まれてより極端な教育に走ることになります。子どもまで非合理的思い込みを繰り返すことになるのは避けたいですね。
よって、『価値観の不一致=問題である』というのは誤解だと思っています。価値観が違うことは間違いではないので、話し合ってお互いに理解し認め合うことが必要です。というように、言葉では簡単に表現できますが、とても難しいことだと私は思います。
非合理的思い込みから自由になる
ここまで、非合理的思い込みについて紹介してきました。中には「こんなことも非合理的思い込みなの?」「何がいけないのかな?」「自分が悪いっていうこと?」と疑問や驚きを感じた人もいるかもしれませんね。
成育環境によって築かれた思い込みが非合理的だと気づくのも時間がかかるでしょう。しかし、アサーションでは「非合理的思い込みだから変えなければならない」とは考えません。
これから、皆さんにはどのような物の見方や考え方をしてもいいという自由な価値観を手に入れて欲しいのです。
「変えなければならない」と考えてしまうこと自体が、新しい非合理的思い込みとなり、自分や配偶者を傷つけるかもしれないからです。自分とパートナーとの関係を振り返って、非合理的思い込みを変えたほうが二人の関係にとってプラスになると思えば、変えることを検討しましょう。
非合理的思い込みは、育ってきた環境や家族体験の影響を強く受けている可能性があります。非合理的思い込みを「捨てる」と考えると、自分と実家の家族との関係が切れてしまうような感じがしたり、親を裏切るような罪悪感を感じたりするかもしれません。しかし、「非合理的思い込みから自由になる」と考えるなら親の物の見方・考え方も受け入れた受けで判断できるために親への申し訳ない気持ちは軽減します。
私たちは夫婦にとってよりプラスになる考え方を大切にしていく。そのために非合理的思い込みを知り、「~しなければならない」という硬直した思考から選択肢を広げていくことが求められるのですね。自分では非合理的思い込みから自由になれそうにないと感じたら、夫婦カウンセリングをお申し込みくださいね。
最後に
今回は、夫婦関係に影響を及ぼす『非合理的思い込み』について紹介しました。
今回参考にした書籍は↓です。
平木典子 アサーション・トレーニングさわやかな〈自己表現〉のために 金子書房 2009
野末武義 夫婦・カップルのためのアサーション 自分もパートナーも大切にする自己表現 金子書房 2015
夫婦は違って当たり前と思えることが、夫婦立て直しには必要不可欠です。自分が非合理的思い込みを持っていたとしても選択肢の一つとして捉えられるようなアサーティブな物の見方・考え方を見つけていきたいですね。
夫婦・家族関係についてひとりで考えるのがつらいと感じたら、夫婦立て直しカウンセリングを選択肢のひとつとして考えていただけたらと思います。
必ずあなたの力になります。
これからも一緒に、しあわせな家族を目指していきましょうね!
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